正常な排尿は、「尿意が生じてから我慢ができ、速やかに排尿が始まり、途切れず進行し、膀胱に貯まっていた尿が完全に排泄されること」を言います。その過程でどこかに異常があると、下記に挙げるような様々な排尿の症状が起きてきます。
- 尿が近い、尿の回数が多い(頻尿)
- 尿の勢いがない、尿が出にくい、途切れる(尿勢低下、尿線途絶)
- 尿が出始めるまで時間がかかる
- 尿の切れが悪い
- 尿の量が減った、増えた
- 尿をする時に出口が痛む(排尿痛)
- 排尿後も残っている感じがする、すっきりしない(残尿感)
- 尿に血が混じる(血尿)
- 急に尿意を催してトイレに駆け込みたくなる(尿意切迫)
- 尿をしたくなってからトイレに間に合わず漏れてしまう(切迫性尿失禁)
- 咳やくしゃみをしたり、重いものを持ったりした時に尿が漏れてしまう(腹圧性尿失禁)
これらの症状を引き起こす代表的な疾患は、下記挙げられます。
前立腺肥大症
前立腺肥大症は、中高齢男性にみられる疾患で、尿が近い、尿意切迫感(尿の我慢が難しい)、尿の勢いが弱い、残尿感(排尿後もすっきりしない)などの尿に関する様々な症状をきたします。
過活動膀胱
突然起こる我慢できないような強い尿意で、通常の尿意との違いが説明困難なものを尿意切迫感といいますが、その尿意切迫感を必須とした症状症候群のことを過活動膀胱といいます。
神経因性膀胱
中枢神経、末梢神経の障害による下部尿路(膀胱・尿道)機能障害を指します。脳血管障害や神経難病、脊髄の病気など様々な神経障害によって生じます。また骨盤内の手術後に生じることもあります。尿検査、尿流測定検査、エコー検査、膀胱鏡検査などを行い、内服薬により治療します。高度な障害に対しては、カテーテルによる治療が必要となる場合もあります。
腹圧性尿失禁
咳やくしゃみ、階段の昇降やジョギングなどの運動時に、瞬間的にお腹に力が入ることで尿が漏れる状態をいいます。分娩や加齢による骨盤底の障害、女性ホルモンの低下などが原因とされています。尿検査や尿流測定検査、エコー検査などを行います。骨盤臓器脱などの確認のため、診察時には患者様に砕石位(分娩の体位)をとっていただく場合があります。
血尿
血尿は文字通り、血液が尿に混入している状態のことです。目で見て血尿とわかるものを肉眼的血尿と呼び、顕微鏡検査で初めて赤血球が確認されるものを顕微鏡的血尿と呼びます。健診の試験紙で行う尿検査で確認されるものは尿潜血と呼びます。
血尿の原因として多いものには、尿路結石症、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)、悪性腫瘍(尿路のがん)などが挙げられます。尿蛋白や、尿中に変形赤血球を認める場合には、糸球体腎炎、IgA腎症などといった腎臓内科的な疾患も念頭に置きます。尿検査や血液検査、エコー検査などの画像検査、膀胱鏡検査などで原因を検索します。
膀胱炎
炎症により膀胱粘膜から出血することがあり、その場合は血尿の症状が現れます。排尿痛、頻尿、残尿感、下腹部痛などもきたすことがあります。こちらもご覧ください。
前立腺炎
精液の一部を作る前立腺という臓器に何らかの炎症を起こした状態です。排尿時の痛み、尿が近い、尿を出しづらいといった症状を伴うことがあります。検尿、エコー検査などを行い、内服薬、点滴で治療します。